青い花

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 坑夫は貧しく生まれついて、また貧しいまま死んでいきます。金属の勢力の所在をつきとめ、地上へ運び上げるだけで、わが事成れりという次第で、黄金のまばゆい輝きに、純な心をまどわされもいたしません。危うい妄想の火をつけられることもなく、結晶の奇妙な形、採掘される場所、そこの鉱山の組み合わさり方の面白さに興じるだけで、黄金を獲てすべてを意のままにしようなぞ夢想だにいたしません。金属が商品に変わってしまえば、坑夫にはもう何の魅力もないのです。あまたの危険と辛苦をかさね、地中のかたい岩石に鉱石を探すほうがむしろ性にあっていて、黄金の誘い声につられて世の中へ飛び出し、地表で策を弄し人を欺いては、黄金を獲得しようとやっきになることはありません。こういった辛苦こそ、いつまでも生き生きした心と、くじけない気持ちを保たせるので、坑夫はわずかな賃金でも深く感謝をして受け、おのが職場の暗い坑道から、毎日生きる喜びを新たにして、地上へ上がってきます。坑夫だけが、光と安息の魅力を、戸外の空気と周囲の景色の心地よさを知悉(ちしつ)しています。飲み物、食べ物をほんとうにおいしく、まるで聖体のように味わうのは坑夫だけでありましょう。なんとやさしく感じやすい心で、仲間と交わり、妻子を抱き、うちとけた語らいのすばらしい賜物を、感謝の心で楽しむことでありましょうか。

引用:ノヴァーリス ,青山 隆夫 訳『青い花』,岩波書店 ,1989,p.107

 

『青い花』は、ドイツ・ロマン派の代表作のひとつです。

ノヴァーリスの死とともに中断された未完の小説ですが、この世の美しいものが幻想的に描かれ、珠玉の言葉によって美の結晶となっています。

芸術を体験することと現実逃避とはイコールではありません。

酒やドラッグに溺れても、現実はいっこうに良くなりませんが、

もしあなたが感性を解き放ち、本物の芸術と向き合うことができれば、現実世界が再び生命力で満たされるでしょう。

 

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